アントワーヌ・ヴァトー
《メズタン》 1718-20年頃

油彩/カンヴァス 55.2×43.2cm Munsey Fund, 1934 / 34.138

18世紀フランスの巨匠アントワーヌ・ヴァトーは、牧歌的自然のなかで上流階級の男女が談笑や恋の駆け引きに興じる優雅な情景を、明るい色彩と柔らかな筆触で描き、ロココ様式の誕生を促しました。同時代の演劇から主題を得たことも、ヴァトーの特徴です。その好例である本作品には、イタリア喜劇「コメディア・デラルテ」のキャラクターの一人で、報われない恋をむなしく追い求める使用人「メズタン」が描かれています。庭でギターを奏でるメズタンは、画面の外にいる女性に向かって愛の歌を捧げているようです。しかし、彼の後ろに見える女性の彫像は背中を向けており、恋が成就しないことを暗示しています。口を半開きにしたメズタンの表情やギターを弾く骨ばった手指に、ヴァトーの確かな描写力が発揮されています。