ティツィアーノ・ヴェチェッリオ
《ヴィーナスとアドニス》 1550年代

油彩/カンヴァス 106.7×133.4cm The Jules Bache Collection, 1949 / 49.7.16

16世紀、ヴェネツィアの巨匠ティツィアーノは、ヨーロッパ各国の王侯貴族から注文を受け、国際的に活躍しました。女神ヴィーナスと美青年アドニスの悲劇の物語はルネサンス期に人気を博し、ティツィアーノも何度も絵画に描いています。本作品の構図は、ティツィアーノがスペイン国王フェリペ2世のために描いた有名な作例(マドリード、プラド美術館)と類似しており、危険な狩りに向かうアドニスにヴィーナスが追いすがる場面を表しています。この後、ヴィーナスの不安は的中し、アドニスはイノシシに突き殺されてしまいます。ティツィアーノは、片足を踏み出すアドニスと彼を引き留めるヴィーナスの動作の絶妙な対比や、雲間から差すドラマティックな光によって、緊迫した雰囲気を巧みに強調しています。